2025/11/28 07:13
南阿蘇 椛島農園だより「とまり木通信」 25年11月
無事に稲刈りが終わりました♪
皆さまこんにちは。極端に暑かったり冷え込んだりと、なかなか大変な天気が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。早いもので、もう11月。師走も近くなってきました。紅葉も山のてっぺんから少しずつ里に下りてきています。
稲刈りが無事に終わりました。部分的に初期除草に失敗したり、花が咲いて籾が熟す時期に気温が高かったりで、ちゃんと美味しいお米が必要量とれるのかヒヤヒヤしましたが、結果的には大豊作だった昨年と同じくらいの収穫量でした。家族で早速いただいたところ、お米の味にうるさい長女から「美味しい、美味しい!」と合格の声が出たので(笑)、ほっとしました。炎天下の中、夏休みでゆったり過ごしている息子に「バイト代あげるから」と誘い出し、一緒に手で草を引っこ抜いた甲斐がありました。来年は、初期除草に失敗しないように準備をがんばらなくちゃ、です。
11月は農閑期ではなく、ひと踏ん張りの月
稲刈りが終わったら農閑期!?というイメージが一般的にはありますが、うちの場合は11月が最後のひと踏ん張りです。10月はいったん落ち着くのですが、そこからまた一気にやることが増えるので、ちょっとめげますが(笑)、毎年のことなので淡々とやっています。鶏小屋に入れる籾殻集め、さつま芋掘り、里芋の越冬のための土掛け、玉ねぎの植え付け、契約栽培のネギの出荷などで大忙しです。今年はさらに、12月の頭にヒヨコを入れることになったので、その準備でドタバタです。ヒヨコは寒さに弱く、今まで12月に入れたことはありませんが、暖かくなる3月頃になってしまうと、来年の春に卵が足りなくなるため、ちょっとしたチャレンジとして今回トライしてみることにしました。鶏舎をビニールで囲い、床のもみ殻を米ぬかと混ぜて発酵させ暖かくし、さらにヒヨコ用の家を作って(130羽分で畳3枚分くらいの大きさ)、こたつや電熱線で保温、湿度調整もして、というふうに頑張れば、まあ大丈夫じゃないかなあ、という感じです。養鶏農家としての腕の見せ所です(笑)。
お米をめぐる状況と農政
お米をめぐる状況のドタバタは相変わらず続いていますね。高市政権になって就任した鈴木農林水産大臣は農水省出身で、小泉前大臣の「お米増産の姿勢」を一転させ、「需要に応じた生産」にする方針のようです。増産の反動で何年後かに大暴落するのではないかという不安を多くの米農家が持ち始めています。その意味では、多くの米農家が少しほっとしたのではと思います。今ほどの高値が続くとは思えませんが、前の価格に戻っては経営を続けられないのが実情です。一方で消費者的には「せっかく小泉さんになって改革進むのかと思ったらまた元通り!?」という声もあるのでは、と感じます。
鈴木大臣は「国の農政方針が短期間でコロコロ変わると、設備投資や後継者育成もできず、それが一番よくない。食糧安全保障という観点からも、農家が安心して米作りできるのが望ましい」と発言しています。単なる「農家よりの政策」ではなく、備蓄米や輸入米も含め、多様な種類・価格の米が選べる環境づくりや、輸出推進、大規模化農家への補助を通してのコスト削減などにも積極的に取り組んでもらいたいです。
もちろん、今後高市政権がどうなるかは誰にも分かりません。すぐに大臣が変わることもあるかもしれません。わが家は政治的には典型的な『ゆるーい中道左派』で、左右の極端な政策は好まない。秩序や伝統は大事ですが、人権や多様性を重視し、その時々で票を入れる政党が変わります。でも選挙は必ず行きます。恥ずかしながら勉強も十分できていませんが、近年の政治の大きな動きはやはり気になります。関心の高い分野から勉強し、一票に反映させたいです。
高齢化と中山間地、熊問題
全国の田んぼの4割を占める中山間地の米農家の主力である70代の人たちが引退していくのは確実です。「大規模化した法人が規模拡大すれば国全体の生産力は落ちない」という論調と、「中山間地では効率が悪く、農地や地方の荒廃を防ぐ必要がある」という論調があり、食糧生産という観点では識者間でも意見が分かれています。
現場の肌感覚としては「この場所では効率化にも限界がある」と感じます。うちの場合、田畑20枚の畔を合わせると3,000㎡(サッカーコート半分ほど)になります。畔が高いので手作業で草を刈るしかありません。田や畑によって違いますが、平均3回は刈ります。平地では1時間で終わる作業が5~6時間かかる現実です。経済的には「お金にならない」作業です。しかし、人手不足で土地が荒れると、保水能力が落ち、大雨時の下流域で被害が大きくなったり、景観が崩れたりします。この現状の象徴として、「熊問題」があります。昔は存在した里山の境界から人が離れつつあります。理由はシンプルで、経済的にやっていけないからです。
イチ農家としては「田舎でつつましくも豊かに暮らせる」という例を示していければ、と思っていますが、日々の忙しさに負けてばかりです(笑)。
日々できることを大切に
生きていればいろいろありますが、日々できることをやって、明日が、来年が、10年後、100年後の未来が少しでも良くなるように、自分のできることをやっていきたいなあ、と考えています。どうぞ皆さまも、ご機嫌よう~。
2025年11月1日
椛島農園 椛嶌剛士(かばしまたかお)
